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熱中症対策に「糖」が必要な理由 〜水分補給を助ける浸透圧のしくみ〜

2026.08.19

健康・学び

夏本番の8月は、熱中症への備えが欠かせません。熱中症対策といえば「こまめな水分補給」と「適切な塩分補給」が基本です。一方で、経口補水液やスポーツドリンクには、糖も含まれています。これは、単に甘くして飲みやすくするためだけではありません。糖、とくにブドウ糖は、ナトリウムと一緒に小腸で吸収されるしくみに関わり、水分を体に取り込みやすくする役割があります。砂糖の意外な役割を紹介するシリーズ【砂糖のホント09】。今回は、熱中症対策に役立つ「水・ナトリウム(塩)・糖」の関係を、身近な「浸透圧」のしくみとあわせてわかりやすく紹介します。

熱中症で起きること

暑い環境では、体は汗をかき、その汗が蒸発するときの気化熱を利用して体温を下げています。しかし、汗とともに失われるのは水分だけではありません。ナトリウムやカリウムなどの電解質も一緒に体の外へ出ていきます。電解質は、体内の水分バランスを保ち、筋肉や神経の働きを支える大切な成分です。

汗を大量にかいたあとに水だけを多量に飲むと、体内の水分は一時的に増えても、失われた電解質は十分に補えません。そのため、運動や屋外作業などで汗を多くかく場面では、水分に加えて塩分などの電解質を適切に補給することが大切です。めまい、強いだるさ、吐き気、意識がぼんやりするなどの症状がある場合は、涼しい場所へ移動し、体を冷やしながら、早めに医療機関へ相談しましょう。

汗で失われるもの


経口補水液には、なぜ糖が入っているの?

家庭向けの記事や店頭で「経口補水液」という言葉を目にすることがあります。経口補水液は、脱水時に失われた水と電解質を補うことを目的にした飲料です。ナトリウムやカリウムなどの電解質と、糖質のバランスが調整されています。日本では、国が許可した病者向けの「特別用途食品」として表示される製品もあります。
ここで大切なのが、糖の中でもブドウ糖(グルコース)の働きです。小腸の表面には、ナトリウムとブドウ糖を一緒に取り込むしくみがあります。ナトリウムとブドウ糖が体内へ吸収されると、その濃度差に引かれるように水も移動します。このように、濃度の違いによって水が移動する力を「浸透圧」と呼びます。つまり、経口補水液に糖が含まれるのは、甘味のためだけでなく、水と電解質の吸収を助けるためでもあるのです。

なお、市販の経口補水液ではブドウ糖などが使われます。砂糖(ショ糖)は体内でブドウ糖と果糖に分解されるため、家庭で補水用の飲み物を作る場合の糖の供給源として用いられることがあります。ただし、市販の経口補水液とは成分設計や品質管理が異なります。家庭で作る場合も、分量や衛生面に注意し、必要な場面での応急的な利用にとどめましょう。

小腸で吸収されるしくみ


浸透圧は日ごろの料理でも使われている身近な現象

浸透圧は、体の中だけで起こる特別な現象ではありません。たとえば、野菜に塩をふると水分が出てしんなりしたり、砂糖をまぶした果物から果汁が引き出されたりします。これは、食材の内側と外側の濃度差によって浸透圧が生じ、水が移動するためです。しんなりした葉物野菜を水にさらすと、細胞の中へ水が入り、シャキッとした食感が戻ることがあります。反対に、濃い塩水や砂糖液に漬けると、食材の水分が外へ出やすくなります。料理では、この浸透圧に加えて、調味成分の拡散や加熱による組織変化なども働き、味がしみ込みやすくなったり、食感が変わったりします。

キャベツを水と塩水に浸けたときの違い


「糖+塩+水」を上手に補給するポイント

日常の水分補給と、汗を多くかいたときや脱水が疑われるときの補給では、目的が異なります。普段は水やお茶をこまめに飲み、食事から必要な塩分をとることが基本です。一方で、運動や屋外活動で大量に汗をかいたときは、水分だけでなく、状況に応じた塩分補給も意識しましょう。

場面 おすすめの考え方
日常の水分補給 水、麦茶など。食事をきちんととり、のどが渇く前にこまめに飲む
汗を多くかく運動・屋外活動 水分に加え、状況に応じて塩分を補給
スポーツドリンクなどを活用する場合は、糖質量やナトリウム量も確認
脱水や熱中症が疑われる場合 経口補水液の活用を検討
症状が強い、意識がはっきりしない、飲めない場合は医療機関へ

経口補水液は、脱水時の水・電解質補給を目的とした飲料です。一般的な清涼飲料やスポーツドリンクよりナトリウムやカリウムが多く、糖質も含まれるため、健康な人が日常的に大量に飲むものではありません。高血圧、心臓病、腎臓病、糖尿病などで食事制限を受けている方、乳幼児や高齢者は、医師・管理栄養士・薬剤師などに相談しながら利用しましょう。

応急用 手作り補水ドリンク レシピ

<材料(500ml)>
・上白糖またはグラニュ糖 20g(上白糖大さじ2強・グラニュ糖大さじ2)
・水500ml
・塩 1.5g(小さじ1/4)

<作り方>
水に砂糖、塩を入れよく混ぜて溶かす。

【ポイント】
作ったドリンクはなるべく冷蔵保存し、必ずその日のうちに飲みきってください。
分量は、できるだけ正確に量ってお作りください。
塩分が多く含まれますので、飲み過ぎには注意が必要です。
持病がある方、食事指導を受けている方は、かかりつけ医や薬剤師などの専門家に相談してからご使用ください。
多く飲むことで健康状態が良くなるものではありません。


夏にぴったり! 浸透圧を生かしたレシピ

砂糖や塩、お酢を使った料理には、浸透圧の働きが生かされています。食材から余分な水分を引き出したり、調味液をしみ込みやすくしたりすることで、おいしさや食感を引き出します。ここでは、夏に取り入れやすいレシピを紹介します。

レモンの砂糖漬け


レモンに砂糖をまぶすと、浸透圧によって果汁が引き出され、爽やかなシロップができます。水や炭酸水で割って楽しめます。
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鮭のエスカベッシュ


揚げた魚を甘酢に漬ける料理です。砂糖や酢を含む調味液が食材になじみ、ほどよい酸味とうま味を楽しめます。冷やしてもおいしい作り置きおかずです。
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パプリカの即席マリネ


余分な水分が抜け、調味液がなじむことで、彩りのよい一品に仕上がります。暑い日の副菜にもおすすめです。
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熱中症予防Q&A

Q. スポーツドリンクと経口補水液の違いは?
A. 目的と成分設計が異なります。スポーツドリンクは運動時の水分補給やエネルギー補給を目的とするものが多く、経口補水液は脱水時の水・電解質補給を目的としています。一般に、経口補水液はスポーツドリンクよりナトリウムやカリウムが多く、必要な場面で使う飲料です。

Q. 経口補水液を作るとき、ブドウ糖でないとだめ?
A. 吸収のしくみに直接関わるのはブドウ糖です。家庭で使う砂糖(ショ糖)は体内でブドウ糖と果糖に分解されるため、応急的な補水用ドリンクの糖の供給源として使われることがあります。ただし、市販の経口補水液とは同じではありません。

Q. 経口補水液は毎日飲んでもいい?
A. 基本的には、日常の水分補給として毎日飲むものではありません。健康なときは水やお茶、食事を基本にし、汗を多くかく場面や脱水が疑われる場面で、必要に応じて使い分けましょう。

Q. ラムネが熱中症対策によいと聞いたけれど?
A. ブドウ糖を含むラムネは、すばやく糖を補給したい場面で使われることがあります。ただし、熱中症対策では水分と電解質の補給が大切です。ラムネだけに頼らず、水分や塩分もあわせて考えましょう。


まとめ

熱中症対策の基本は、暑さを避けること、体を冷やすこと、そしてこまめな水分補給です。汗を多くかく場面では、水分とともに失われるナトリウムなどの電解質も補うことが大切です。経口補水液などに含まれる糖、とくにブドウ糖は、ナトリウムと一緒に小腸で吸収されるしくみを通じて、水分を体に取り込みやすくする役割があります。一方で、糖だけをとればよいわけではなく、水・ナトリウム・糖のバランスと、使う場面が重要です。毎日の料理でも、砂糖や塩は浸透圧を利用して食材のおいしさを引き出しています。今年の夏は、正しい熱中症対策に加え、浸透圧のしくみを食生活の中でも感じてみてはいかがでしょうか。

 

*監修:DM三井製糖株式会社
*出典・参考資料:
環境省「熱中症環境保健マニュアル ~総論~(2025年7月版)」
厚生労働省「職場における熱中症予防情報|暑さ指数について」
消費者庁「経口補水液(けいこうほすいえき)について」
WHO / UNICEF “Oral rehydration salts: Production of the new ORS”
精糖工業会「砂糖と調理の科学」
農畜産業振興機構「ジャムと砂糖のはなし」
農畜産業振興機構「漬物製造における砂糖の位置付け」
済生会「塩分と脱水 ~経口補水液の作り方~」


 

 

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