黒糖のあの香りの正体は? 甘くて香ばしい独特の風味が生まれる理由
2026.04.20
健康・学び
2026.04.20
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5月10日は「黒糖の日」。砂糖の意外な役割を紹介するシリーズ【砂糖のホント05】。第5回は、『黒糖の香りについて』です。黒糖の袋を開けたとき、ふわっと広がるどこか懐かしいような、甘くて香ばしい香り。 実はあの黒糖の独特な香りは、製造の過程で生まれるある成分が大きく関わっています。今回は、黒糖ならではの風味について、科学の視点からわかりやすくご紹介します。

黒糖または黒砂糖とは、サトウキビの搾り汁に中和、沈殿等による不純物の除去を行い、煮沸による濃縮を行った後、みつ分の分離等の加工を行わずに、冷却して製造した砂糖で、固形又は粉末状のものをいいます。
*消費者庁による黒糖の定義
消費者庁による黒糖の定義にもあるように、黒糖はサトウキビのしぼり汁を煮詰めて固めた砂糖です。精製をほとんど行わないため、サトウキビ本来の風味やミネラルが残るのが特徴です。収穫・製造は、サトウキビに糖分が蓄えられる冬(12月~4月頃)に集中して行われます。黒糖はいわば「サトウキビをぎゅっと凝縮した砂糖」。その豊かな香りとコクは、この製法ならではのものです。


社内での黒糖の製造実習
黒糖の香りは、ひとつの成分からできているわけではありません。「甘い香り」「香ばしい香り」「黒糖特有の香り」など、数十種類の香気成分が含まれています。
● 黒糖の香りをつくる主な成分

| 成分 | 香りの特徴 | 含まれる食品や飲料 |
|---|---|---|
| ソトロン | 黒糖特有の甘く深い香り | 熟成した日本酒など |
| マルトール・イソマルトール | やさしい甘い香り | 砂糖のカラメル化でも生まれる |
| ピラジン類・フェノール類 | 香ばしい香り | コーヒーや麦茶、ココアなど |
● 黒糖特有の香り「ソトロン」とは?
数ある香気成分の中でも、黒糖の甘く深みのある香りを特徴づける成分のひとつが、ソトロン(sotolon)です。ソトロンは、サトウキビそのものに由来するというよりも、糖やアミノ酸が加熱によって変化する過程で生じる香気成分として知られています。黒糖づくりでは、サトウキビのしぼり汁を煮詰めて濃縮していきます。こうした加熱工程の中でさまざまな香気成分が生まれ、重なり合うことで、黒糖ならではのコクのある豊かな香りが形づくられていきます。ソトロンも、その奥行きのある風味を支える成分のひとつと考えられています。
● 香りの重なり
このような香りの重なりは、コーヒーやチョコレート、焼き菓子などにも見られるものですが、黒糖の場合はサトウキビ由来の成分と加熱による変化が組み合わさることで、より独特な印象を与えます。また、これらの香り成分は製造条件によっても変化するため、産地や製法の違いによって風味に個性が生まれるのも黒糖の魅力のひとつです。ひと口に黒糖といっても、その香りや味わいが少しずつ異なるのは、こうした理由によるものです。
では、黒糖と上白糖やグラニュー糖では、なぜここまで香りに違いが生まれるのでしょうか。
その大きな理由は、製造工程における「温度」と「精製度」の違いにあります。上白糖やグラニュー糖などの精製糖は、純度の高いショ糖を結晶として取り出すことを目的としているため、不純物や色、香りのもととなる成分や糖みつ分をできるだけ取り除く工程が加えられます。また、煮詰める際も圧力を下げて温度が上がりすぎないように管理されるため、糖の分解や反応が起こりにくく、結果として香りは控えめでクセのない仕上がりになります。
一方、黒糖はサトウキビのしぼり汁をそのまま煮詰めていく製法で、精製をほとんど行いません。さらに、高温で一気に加熱・濃縮し、糖みつ分を含んだまま、固形や粉末にするため、糖やアミノ酸が反応し、さまざまな香り成分が生成されます。この過程で、甘い香りや香ばしい香り、そして黒糖特有の香りが引き出されていくのです。
同じサトウキビを原料としながらも、「ショ糖の純度を上げる」上白糖やグラニュー糖と、「素材を活かす」黒糖では、香りの方向性が大きく異なります。この違いこそが、それぞれの砂糖の個性となり、料理やお菓子での使い分けにもつながっているのです。
黒糖の香り成分「ソトロン」は、別名「シュガーラクトン」、「キャラメルフラノン」などと呼ばれることもあり、実はさまざまな食品や飲料にも含まれています。たとえば、熟成した日本酒や、シェリー酒、紹興酒、貴腐ワインなどの熟成香の成分として含まれていたり、お菓子、パン、乳製品、飲料などの食品に、甘味とコクを強調する香料としても幅広く使用されています。また、黒糖の甘く香ばしい香りには虫を引き寄せる力もあるため、誘引剤として利用されています。
黒糖の魅力は、そのまま味わうだけでなく、料理やお菓子に使うことでさらに引き立ちます。香りとコクを楽しめる、おすすめのレシピをご紹介します。

▶️ レシピはこちら
黒糖のコクと香りをシンプルに楽しめるシロップ。定番のあんみつだけでなく、かき氷やホットケーキ、ヨーグルトにもおすすめです。

▶️ レシピはこちら
黒糖の甘さと香ばしさが際立つ昔ながらのおやつ。揚げることでさらに香りが引き立ちます。

▶️ レシピはこちら
ふんわりとした食感と黒糖の香りが広がる中華風蒸しケーキ。やさしい甘さでお子さまにも人気です。

▶️ レシピはこちら
黒糖と泡盛で作る本格ラフテー。時間をかけただけおいしさも深まります。
🔗【上記のレシピで使用した商品】
粉末やんばる糖
沖縄黒砂糖

黒糖の香りは、サトウキビそのものの香りだけではなく、高温で煮詰める製造工程の中で生まれる成分が大きく関わっています。「甘い香り」「香ばしい香り」に加え、ソトロンによる「特有の香り」が重なり合って、あの奥深い風味が完成します。
ぜひ5月10日の黒糖の日に、黒糖の豊かな香りとコクを、日々の料理やおやつで楽しんでみてください。
砂糖の意外な役割を紹介するシリーズ【砂糖のホント】。他の記事もぜひご覧ください▼
砂糖のホント01
砂糖のホント02
砂糖のホント03
砂糖のホント04
*監修:DM三井製糖株式会社
*参考文献:日本家政学会誌,49(9),1059-1061(1998)/日本農芸化学会誌,57(6),557-561(1983)/消費者庁