石垣島のサトウキビ農業の未来
~持続可能な農業と環境保全の両立へ~
2025.11.17
地域社会
2025.11.17
地域社会
【はじめに】島の宝物「サトウキビ」が抱える悩み
美しい自然に恵まれた沖縄県・石垣島。この島では古くからお砂糖の原料となる「サトウキビ」が暮らしを支える大切な作物となっています。しかし、サトウキビ栽培は常に自然の厳しさと隣り合わせ。特に、毎年のように襲来する「台風」と、時として発生する「干ばつ(水不足)」は、農業経営を左右する深刻な課題となっています。
この長年の課題に対し、DM三井製糖のグループ会社「石垣島製糖」が、持続可能な農業と環境保全の両立へ向けた新しい挑戦を始めています。
【海外の知見を、石垣島の畑へ】
現在、研究機関の国際農研とともに実証試験を行っているのは、「深溝植付(ふかみぞうえつけ)・部分深耕(ぶぶんしんこう)栽培技術」。
これは、サトウキビの苗を深く植え、畑の一部だけをピンポイントで耕す新しい農法です。
この農法はDM三井製糖が以前、さとうきび農業が盛んなタイで開発した技術を、石垣島の環境に合わせて応用する試みで、主に2つのポイントがあります。
ポイント1:「深く植える」ことで、強く、たくさん育つ
苗を今までよりも深く植えることで、2つの大きな効果が期待されています。

①台風に強くなる
苗を深く植えることで根が地中深くに張り、サトウキビが倒れにくくなります。これにより、台風による被害の軽減が期待されます。
②収穫量がアップする
サトウキビは収穫後も同じ株から芽が出る「株出(かぶだし)」を行うことで、同じ苗から数回収穫できます。深植えを行う事で土台の株がしっかり残るため、深い土中の水分を有効に使うことが出来、翌年以降も元気な芽が多く育つため収穫量の増加に繋がると期待されています。
ポイント2:「部分的に耕す」ことで、人と地球にやさしく
農作業と環境の両面にメリットをもたらす、苗を植える列の部分だけを耕す「部分深耕」技術

①農家の負担が減る
従来、植え付け前に畑を何度も全面に耕す必要がありました。部分深耕技術では苗を植える部分のみを深く耕します。そのため植え付け前の耕す作業が1回で済みます。これにより農家の労力と時間が大幅に削減されるのです。
②Co2排出減、赤土流出防止への期待
耕す回数と面積が減ることでトラクターの燃料消費とCO2排出量を低減。さらに、畑全体を大きく耕さないため、大雨の際に畑の土(赤土)が海へ流れ出すのを防ぐ効果も期待されます。この**「赤土流出防止効果」**は今後、数値で効果を測る試験が予定されており、島の美しい自然を守る点でも注目されています。
【持続可能な農業の未来を目指して】
実証試験が目指すのは、島の農業が抱える課題を解決し、より持続可能なモデルを築くことです。農家の経営を安定させ、環境への負荷を減らし、高品質な砂糖を消費者へ届け続ける。この好循環を生み出すことが、未来への投資なのです。
新しい技術の確立は簡単ではありません。石垣島製糖は、研究機関の国際農研と共に、この農法が島の気候や土壌で本当に有効か、時間をかけて丁寧に見極めていきます。地道な挑戦が、石垣島の農業の未来にどう貢献していくか、今後も注目されます。