【後編】コウケンテツさんと
男性の子育てや家事参加の促進を考える
料理教室&座談会
2025.04.14
人

2025.04.14
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男性社員の育児休業取得率の目標が85%(2030年)と大幅に引き上げられ、男性育休が当たり前になる社会もすぐそこです。DM三井製糖ホールディングスグループ サステナビリティ推進室では、料理研究家・コウケンテツさんを講師に迎えて「男性の子育てや家事参加の促進」イベントを開催しました。第一部の料理教室で手軽な家庭料理を学んだ後、第二部では座談会を実施。社員とそのご家族の13名が参加し、日頃から抱いている料理の悩みや疑問、男性育休についての思いを、コウさんを交えてざっくばらんに語り合いました。
第二部の座談会は、3つのグループに分かれ、テーマごとにディスカッションした後、グループ発表という流れで行われました。コウさんも各テーブルを回りながら、みなさんと円座を組んで話し合いに参加。男性ならではの視点から料理に関する悩みや疑問が語られ、熱気のある意見交換がなされていました。
グループワークを通して出たご意見と、コウさんからのアドバイスをご紹介します。
【グループ発表】
Aグループ:料理キャリアやスキルが人それぞれで、悩みも段階差を感じました。買い出しを含めて料理するまで手間と時間がかかる、献立がワンパターン化している、後片付けの皿洗いが面倒といった声が上がりました。
Bグループ:日頃から料理をしている人が多く、ワークバランスを考えて取り組んでいる方もいらっしゃいました。悩みの第一は献立。毎日考えることで料理が苦痛になりかねないとの意見も。バリエーションを増やすコツとは?
Cグループ:毎日料理することができないので、何日分かをまとめて作れたら料理が苦ではなくなるのではという話になりました。保存方法や、買い置きした食材を冷凍保存した場合の解凍方法のアドバイスをいただきたいです。
【コウさん’s ワンポイントアドバイス】
①献立のバリエーション
日本の食事事情はとても豊か。和食だけでなく伊や仏、中と選択肢も様々あります。僕は30カ国以上の家庭料理を取材してきましたが、驚いたのはどの家庭もほぼ毎日同じ料理を食べていること。それに不満はなく、むしろ斬新な料理を出されてもあまり食べないんですね。食文化の違いもありますが、献立にバリエーションはまず要らないんじゃないかと思っています。得意料理が2品あれば、なんとかなると思うんです。得意料理を何度も作る良さは、味がどんどん洗練されていくことと、片付けまでのルーティンが確立されていくこと。肉じゃががこんなに早く作れて、しかもおいしい!となったとき、次はパスタに挑戦!とステップアップしていくことも、料理を楽しむコツです。バリエーションは自分の技術にこだわらず、お惣菜やフード配達に頼るのも一つです。
②作り置きの保存方法
今はジッパー付きの袋をはじめ保存用アイテムがとても充実していますよね。僕はフタにエア弁のついた耐熱保存容器を愛用していて、ご飯も煮込み料理も全部、それに詰めて保存しています。煮込み料理は必ず多めに作り、翌日食べる分は冷蔵庫、しばらく置く分は冷凍庫へ。気をつけてほしいのは、おいもなどの根菜は一度冷凍するとレンチンしたときシャリシャリした食感になってしまうこと。煮込み料理の場合、おいもは食べ切るのがベターです。手作りおかずは、冷蔵保存で1〜2日、冷凍保存で2週間程度がおいしく食べる目安です。
③買い置き食材(肉)の解凍方法
冷凍肉の解凍は、常温解凍が一番ベスト。出社前に冷凍庫から出しておくと、帰宅後の調理タイミングにばっちりです(季節によっては冷蔵庫解凍を)。水につけておくのも戻りが自然です。その際、ラップなどで水が入らないようにするのをお忘れなく。時間を短縮したい場合は、ぬるま湯、お湯での解凍もありですが、時短な分、肉質や味わいは落ちてしまいます。レンジの解凍機能を活用する場合、半解凍にしてあとは水につけておくなど、合わせワザで解凍するのも肉質を落とさないコツです。
DM三井製糖ホールディングスグループでの男性社員の育児休業取得率は、2023年度3月期/11名、2024年度3月期/18名でした。さらなる取得率向上を目指し、企業はどうあるべきなのかーーグループワークを中心に忌憚のない意見が飛び交いました。
【グループワークでのディスカッションから】
・男性社員が育休を取ると、同じチームのメンバーに負担がかかる。
・慢性的に人が足りておらず、育休によって部署内の業務負担が増えるため、取得しづらい。
・20代では男性の育休取得が至極当然な制度だが、40代以上の世代とは捉え方の違いを感じる。
・ひと昔前は大家族で支え合いながらの家事育児が一般的だったが、現代は地元から離れている
人が多く、ワンオペになりがち。夫が育休を取得してくれると、妻の負担はかなり減るので、
育休取得が当たり前の社会に。
【グループ発表】
Aグループ:私は7年ほど前に育休を取りましたが、あの頃より随分、男性社員が育休を取りやすい環境になっていると感じます。むしろ、取らない方が、なんで取らないの?という雰囲気も。育休で不在する社員の業務をどうフォローしていくか、それを考えていくことが企業課題だと話し合いました。
Bグループ:部署内で誰かが育休に入ったとき、周りからフォローしてもらえる体制があれば一番いいのではないかという意見が出ました。サポートする社員の負担も鑑みて、会社側が手当を支給するような制度ができれば、不在期間中の労働力不足を心配することなく育休も取得しやすくなるのでは。
Cグループ:育休を取得する側は、家族をサポートしたいという思いの反面で、「チームや部署に迷惑がかかる」という思いに苛まれもします。そうした精神的な負担を軽減させるため、担当業務をフォローしてくれるメンバーに対して、インセンティブのようなものがあればいいのではないでしょうか。
【コウさんからのご意見】
育休制度は男性の取得率も増加傾向にあると理解しつつ、まだ日本は後進国なのかなというのが、世界を見てきた中での印象です。みなさんからお話を聞いて、メンタリティとしては取って然るべきと意識が向いているのはとても力強く、未来に向けて良い兆しだと思う一方、「物理的に人が足りていない」という課題も見てとれました。メンタルは追いついているものの、日本のシステムや構造的な問題が追いついておらず、アンバランスだという点が今の現状だと思いました。
また、取得してもなかなか家庭内で機能しきれないという現実もあります。日本の社会構造の問題、会社の制度的な問題、家庭の問題の全てが絡んでくるんですよね。そこが上手く連携をとることができたら、もっと育休が取得しやすくなるような気がしています。
それでも、DM三井製糖ホールディングスグループでは、男性育休取得への意識がかなり浸透しているように感じます。インセンティブ制度などの建設的な意見をはじめ、みなさんの意識の高さが、今後の取得率の向上につながっていくと思います。