【砂糖のホント 01】おせちが長持ちする理由。
砂糖が支えてきた日本のお正月
2025.12.12
健康・学び
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お正月に欠かせないおせち料理。最近では市販品を利用する方も多くなりましたが、黒豆や栗きんとん、伊達巻など、一部は手作りするご家庭もまだまだ多いのではないでしょうか。実は、こうしたおせち料理が日持ちする背景には、“砂糖” が大きく関わっています。
では、砂糖を加えるとなぜ保存性が高まるのでしょうか?
食品の代表的な保存方法といえば「乾燥」。水分を減らすことで、微生物が活動できる環境をなくし、腐敗やカビの発生を防ぎます。
砂糖漬けや塩漬けも、古くから活用されてきた保存技術です。野菜や果物に砂糖や塩をまぶすと水分が染み出し、その水分は砂糖や塩に結びついて保持されます。この状態の水分は、微生物が利用できません。
微生物が活動できる水分は「自由水」と呼ばれ、その割合は 水分活性(Aw) という数値で表されます。
砂糖や塩を加えることでこの水分活性が下がり、添加量が増えるほど保存性は高まります。


黒豆や栗きんとん、海老帆立のつや煮に伊達巻き、田作り、昆布巻きなど、これらは新年を祝う華やかさだけでなく、砂糖の保存効果によって正月のあいだ安全に食べられるよう工夫された料理でもあります。また、砂糖には、食材の水分を抱え込んでしっとりとした状態を保つ“保水性”があります。黒豆のふっくらとした仕上がりや、栗きんとんのなめらかな口当たりは、この保水力によるものです。冷蔵庫のなかった時代、保存とおいしさを両立させるための工夫が受け継がれ、今もおせちの伝統として息づいています。
ジャムは果物と砂糖を煮詰めて作る、世界中で親しまれている歴史ある保存食です。日本では「果物の風味を楽しむ軽やかな甘さ」が好まれ、JAS規格でも糖度40%以上と比較的低めに定められています。一方、欧米では60%以上の高糖度が一般的で、長期保存が重視されています。砂糖の量によってとろみや香り、保存期間まで変わるため、同じジャムでも国や家庭によって個性が際立ちます。砂糖はジャムに欠かせない大切な役割を担っているのです。
イギリスの伝統的なウエディングケーキ「シュガーケーキ」は、砂糖の保存力を最大限に生かした特別な菓子です。ドライフルーツをたっぷり練り込んだ濃厚なパウンドケーキを、硬めのシュガーペーストでしっかり覆うことで長期間の保存を可能にしています。1段目は披露宴で、2段目は欠席者へ、3段目は第一子誕生のときに食べるという風習が残っているのは、砂糖のおかげで品質が保たれるからこそ。祝いの時間をつなぐ、甘く美しい文化です。

現代の食品には多様な保存料が使われていますが、その中でも砂糖は、東西を問わず古くから親しまれてきた長い歴史を持っています。砂糖は食品の腐敗を防ぎ、同時に食材をしっとり保つ保水性も備えています。この特性は、ジャムや佃煮、おせち料理など、さまざまな保存食に生かされてきました。
また、砂糖そのものに賞味期限の表示義務がないのは、水分が極めて少なく、乾燥状態で長期間品質が変わらないためです。冷蔵技術が発達する以前から、人々は砂糖の保存力を生活の知恵として自然と取り入れ、日常の料理や季節行事の品々に活用してきました。
砂糖は甘さを加えるだけでなく、食を安全に守り、料理をよりおいしく仕上げる力を持った、古くから暮らしに寄り添ってきた“天然の保存料”なのです。
