【後編】コウケンテツさん×西村一弘教授
幸せのちからになる“適糖生活”トークショー
2025.12.16
適糖ライフ特集
2025.12.16
適糖ライフ特集
栄養と健康の専門家である西村一弘先生と料理研究家のコウケンテツさんがタッグを組んで11月は東京、そして12月は福岡でトークショーを開催しました! 抽選のもと500名が参加したイベントの模様を前後編でお届けします。
二人のスペシャリストによる〈糖についての正しい知識〉と〈糖の上手な活用法〉を、より健康的な食生活にお役立てください。

福岡会場の様子

70歳は様々な健康面でポイントになっています。筋肉は70歳を過ぎるとガクっと落ち、認知症も70代は60代と比べて倍に増え、80代では3人に1人が認知症に。糖尿病患者も60代まで6人に1人ほどだったのが、70歳を過ぎると一気に4人に1人になり、80歳を超えると2人に1人がかかる病気になります。
低糖質、高たんぱくになると腎臓に悪影響が出ます。腎不全になるとおしっこが出なくなり、体内に老廃物が溜まって尿毒症という状態に。それで命をなくさないよう、透析にかかる高齢者も増えています。そうした意味でも、低糖質が本当に危険であることをご理解いただきたいと思います。

お砂糖とたんぱく質を上手に摂れるレシピをご紹介します。「豚肉と野菜のポットロースト(YouTube)」は、作り方も簡単なおもてなし料理。固くなりがちな塊肉をすごくしっとりと仕上げるため、肉の表面にはお砂糖をまぶします。これが、お砂糖を使う画期的なワザの第二弾「砂糖まぶし」です。味付けのためでなく、先にお砂糖をまぶして塩を入れることで、塩の量を減らすことができます。また、お砂糖は肉の臭みを消してくれるので、ハーブがなくても大丈夫です。お砂糖をまぶすと甘くなってしまうのでは?と質問をいただきますが、料理においてお砂糖は調和を保ってくれるので、決して甘くなりません。旨みが出て、すごく美味しくなります。
たんぱく質と糖を上手に摂りながら野菜も摂れ、しかもおもてなしにもぴったりですから、ぜひ一度、お試しいただければと思います。

糖とは、砂糖だけでなく糖質全体を指します。和食のバランスで見たとき、ご飯、パン、麺類も含め、糖質(炭水化物)は最低でも50%は切らないでほしいところです。日本人のエネルギー摂取量の調査では、1975年からたんぱく質の割合はほとんど変わらず、増えているのは脂質です。戦後20%だったのが現在は27%となり、その分、減ったのが糖質です。かつて60%以上摂っていたのが、2023年のデータでは55%を切り、糖質の摂取はどんどん減っています。
ところが、糖尿病は毎年増えています。糖質摂取は減っているのに糖尿病は増えているのは、おかしくないですか? 糖質の摂取=糖尿病ではいないということは、専門家の間では常識になっています。それにも関わらず、世間では「糖質オフ」「糖質制限をしましょう」という流れが根強く、誤解を招く情報に警鐘を鳴らず報道も少しずつ増えています。本日ご参加の方々には、周りの方に正確な情報を伝えていただきたいですね。

私からはお砂糖を使うことでの効果効能をお伝えしたいと思います。お砂糖には、肉を柔らかくしたり酸化を防止したり、餅などのデンプンをしっとりと保ち、たんぱく質と反応して美味しい香りを放ったり、防腐効果もあると言われています。
お砂糖は料理のつなぎ役。甘みを入れないと、和食では味のばらつきが出やすくなります。そして、上手に使い分けると料理の楽しみが変わります。私はお砂糖の量を減らすより、お砂糖を選ぶことに楽しさを見い出しています。先ほどのポットロースであれば、豚の臭みを消すときはサトウキビの香りが強い黒砂糖やキビ糖を、さっくり軽やかに仕上げたいときはグラニュー糖と、仕上げたい味わいによって使い分けるのも、料理への良いアプローチだと思います。
甘みの記憶も砂糖の大切な要素。たとえば、暮れになると思い出す、幼い頃に食べた近所のおばあさんの黒豆の甘い味。妻と険悪になったときは、一緒にティータイムをするようにしています。甘いもので気持ちがマイルドに晴れやかになる、そうした効果もあると思うんです。
世界の家庭料理を取材して、思い出されるのはスリランカです。ホームステイ先のお宅で過ごす最後の夜、お米をココナッツミルクと砂糖で炊いた「キリバト」でもてなしてくれました。「旅の無事を祈ります」という思いが込められた、やさしい味わいのする甘い料理でした。そんな風に、砂糖には人や記憶や文化をつないでくれる役割もあると思っています。

糖質は「質」が良くないと、血糖値が急激に上がります。血糖値を下げるホルモン「インスリン」が体の中に糖を取り込み、どんどん脂肪を増やす結果になります。大切なのは、ゆるやかに血糖を上昇させるような「スローカロリー」という考え方です。糖尿病患者を専門とする病院での食事を監修していますが、和食の一汁三菜にパラチノースという糖質を使っています。
パラチノースはゆっくり、ショ糖の5倍の時間をかけて腸に吸収される糖です。急に上昇せず、ゆっくりと血糖値を上げていきますから、インスリンをたくさん必要としません。そうした質の良い糖は、一般の砂糖と同じだけエネルギーを摂っても体への負担が少なく、脂肪になりにくいんです。ぜひコウさんの料理レシピで、適切な糖を適量摂っていく「適糖生活」をしていただけたらと思います。

最後に2品、パラチノースを使ったおすすめレシピをご紹介します。お砂糖と、お砂糖と同量のパラチノースを入れることで、ゆっくり腸に吸収する効果をプラスできます。「鶏むね肉とレンコンのやさしい甘酢炒め」は、筋肉維持にも疲労回復にも最適です。鶏むね肉は削ぎ切りし、片栗粉をまぶして焼くことで、しっとり柔らかな食感に。タレにしょうゆ、お砂糖とパラチノース、お酢を合わせるだけで、身体に染み入る味わいになります。
「たらと豆腐のやさしいうま煮」は、豆腐とたらのダブルたんぱく質。お砂糖でコクもプラスでき、ボリュームのある満足度の高い料理です。たらをはじめ、お魚にも砂糖をまぶして少し置くと水気が出てきますから、それを拭けば臭みもしっかり取ることができます。
どちらも今からの時期にぴったりな、ヘルシーでおいしい簡単料理です。質の良い糖分をゆっくり吸収していただき、身体にも心にもやさしい味をお楽しみください。

東京会場の様子

福岡会場の様子