TCFD提言に基づく
情報開示

TCFD提言への賛同、TCFDコンソーシアムへの参加

DM三井製糖ホールディングス株式会社(代表取締役社長:森本卓、本社:東京都港区)(以下、当社)は、2023年6月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)[※1]提言に賛同を表明し、TCFDコンソーシアム[※2]に参加しました。 自然の恵みを大切に使わせていただきながら主力事業を行う当社にとって、気候変動による様々な影響は、優先度の高い課題であると認識しております。2022年より、TCFD提言に沿ってシナリオ分析およびリスク・機会の検討作業を進めております。これらを事業推進上のリスクマネジメントおよび経営戦略に反映するとともに、今後その進捗を積極的に開示してまいります。そして社会全体の脱炭素化に貢献しながら、さらなる成長を目指します。

  • ※1 G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により設立。企業等に対して、気候変動関連リスク、および機会が経営に与える影響を評価し 「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について開示することを推奨。
  • ※2 TCFD提言に賛同した企業による適切な情報開示や、金融機関等の適切な投資判断につなげるための取り組みについて議論を行うために2019年に設立。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応

①ガバナンス
当社グループでは、気候変動問題・人権問題等のサステナビリティに関する課題への対応がリスクの低減かつ企業の成長にもつながる重要な経営課題の一つだと認識しております。このような認識のもと、サステナビリティ経営体制を下図のように定め、経営会議の諮問機関としてサステナビリティ委員会を設置しております。
サステナビリティ委員会は、代表取締役社長を委員長とし、サステナビリティ担当役員、執行役員、外部有識者で構成されており、サステナビリティに関する以下の経営課題への取り組みに関し、DM三井製糖ホールディングス サステナビリティ推進室より報告を受け、経営会議の諮問に応じて審議・検討します。
  • 当社グループとしてのサステナビリティに関する基本方針および活動テーマ等の方針(案)の策定
  • 推進体制および運営方針(案)の策定
  • 重要課題、目標設定、情報開示等の個別活動方針(案)の策定(気候変動のリスクと機会に関する方針の策定、気候変動を含むサステナビリティに関する重点項目のKPI設定および取り組みの進捗状況のモニタリング)
サステナビリティ委員会は3ヵ月に1回開催され、審議・検討した結果を経営会議に答申します。経営会議は、当該答申内容を踏まえて経営会議で審議した結果を、取締役会に報告又は提案します。
②戦略
当社グループの事業は、原材料の大半が気候変動による物理的リスク[※1] の影響を大きく受ける農産物であること、また製造・加工・販売の過程において多くのエネルギーを消費しており気候変動による移行リスク[※2]の影響を大きく受けることから、気候変動を重要なリスクと認識しております。当社グループでは、気候変動にかかるリスクと機会を特定するにあたり、当社グループの中期経営計画との時期的整合性、またパリ協定、日本政府の掲げる目標年といった外部環境要素を踏まえ、短中期の時間的範囲を2030年度までの期間、および長期の時間的範囲を2050年度までの期間と定めました。
気候変動にかかるリスクおよび機会については、当社グループの主力事業である国内製糖事業を対象に、網羅的なリストアップを行いました。次に、すべてのリスクおよび機会について公開資料[※3]等に基づき財務的影響を検討したうえ、当社グループの事業への影響等に鑑み下表のとおり項目を抽出および整理しました。
さらに、特に財務的影響が大きいリスクについては、気候変動シナリオ(物理的リスクは4℃上昇シナリオ[※4]、移行リスクは1.5℃上昇シナリオ[※5])に基づく評価を行ったうえ、リスクの最小化および機会の探索のための体制を確認しました。
  • 気象災害の激甚化による当社グループ工場等の被害額増大
    過去に国内工場で高潮被害を受けている他、大型台風による設備への風害も発生しており、常に顕在化する可能性があるものの、その予測が困難です。
このような気候変動によるリスク顕在化の不確実性に対応するため、当社グループでは、予防の観点で設備の定期メンテナンスを実施し、自社工場(千葉、神戸、福岡)に製糖委託工場を加えた6工場による供給網を確保する他、定期的なBCP訓練やその見直し、原材料調達先との連携や複数購買など、気象災害発生時において主要事業の早期復旧を図るための体制を整備しております。
さらには、緊急時の供給体制を構築し、基礎調味料であり身体の重要なエネルギー源でもある砂糖の安定供給を確かにすることで、サプライヤーとしての信頼を構築することは気候変動に関する機会(CO2排出削減のための生産プロセスイノベーション、環境負荷に配慮した包装資材の開発・促進等)になりうると考えております。
  • 平均気温などの変化による原料(サトウキビ及び甜菜)供給量の増加や減少
    公開資料[※6]によれば、気候変動による気温変化は低緯度地域より高緯度地域の方が大きいとされています。このため、当社グループは高緯度地域で栽培されている甜菜を対象に、影響を評価しました。「てん菜における2030年代の予測値」[※7]によれば、温暖化により収量(根重)は増える一方、夏季以降の高温により根中糖分が低下する側面もあり、その結果として得られる糖量としては微増にとどまると推定されています。一方、病害(褐斑病、葉腐病、根腐病、黒根病等)については発生量の増加、さらにはヨトウガなどの害虫についても食害量の増加が想定されています。
このようなリスクに対応するため、グループ会社の北海道糖業株式会社において、病虫害耐性の高い甜菜の導入を推進しております。また、今後は研究機関と連絡を密にしながら、さらなる情報収集により財務的影響評価の精緻化を進めます。
  • 炭素税や排出権取引制度等の導入による、費用の増加
    当社グループの中核である精製糖事業では主に生産プロセスで大量のエネルギーを必要とすることから、創エネ、省エネ、脱炭素エネルギーの採用(グリーン電力の購入、バイオマス燃料等)による2050年CO2排出量実質ゼロに向けた取り組みを推進します。また、サプライヤーと連携したCO2削減や商品および価格体系の見直しによって、財務リスクの最小化に取り組んでまいります。
今後も、重要なリスクについての更なる精査や、他の気候変動にかかるリスクと機会の検証を進め、当社グループの気候変動に対するレジリエンス強化に取り組んでまいります。
  • ※1 気候変動に起因する自然災害等による資産や事業活動への直接的な損傷等に関するリスク
  • ※2 低炭素社会への移行に伴って発生する政策・法務・技術革新・市場嗜好の変化等に起因するリスク
  • ※3 農林水産省「食料・農林水産業の気候関連リスク・機会に関する情報開示入門」(2021年6月)
  • ※4 日本沿岸域の被害想定額増加率についてはWRI(世界資源研究所)“Aqueduct Floods” [ https://www.wri.org/applications/aqueduct/floods/ ]を参照
  • ※5 将来の炭素価格想定についてはIEA(国際エネルギー機関) “World Energy Outlook 2023”におけるNet Zero Emissionsシナリオを参照
  • ※6 気象庁「世界の年平均気温」 [ https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/an_wld.html ]を参照
  • ※7 北海道立総合研究機構 農業研究本部 中央農業試験場「戦略研究『地球温暖化と生産構造の変化に対応できる北海道農林業の構築-気象変動が道内主要作物に及ぼす影響の予測-』成果集」(北海道立総合研究機構農業試験場資料 第39号, 平成23年10月)

物理的リスク

期間 種別 リスク・機会項目 対応策や機会
短期・中期 リスク 気象災害の激甚化による、
当社グループ工場等の被害額増大
・設備の定期メンテナンス強化
・国内6精製糖工場によるバックアップ体制強化
・定期的なBCP訓練やその見直し
・原材料調達先との連携や複数購買
リスク サプライチェーン上の取引先の操業停止等による、当社グループへの損失発生 ・原材料調達先との連携や複数購買
・依存度の高い原材料・副原料についての代替原料の確保及び代替製造方法の検証・確保
リスク 耕作可能地減少による生産拠点の減少、
および物流拠点の減少による、
原材料および製品の供給能力低下
・BCP計画の策定
・代替耕作地確保に向けた情報収集、
代替物流ルートの確保
リスク/
機会
平均気温などの変化による、
原料(サトウキビ及び甜菜)
供給量の増加や減少
・気候・気温変化に対する耐性の高い品種の導入(サトウキビ及び甜菜)
・病虫害耐性の高い品種の導入(甜菜)
・原料供給量の増減に伴う原料価格(国際相場)の変動を見据えた商品および価格体系の見直し
リスク/
機会
気温上昇による、砂糖消費行動の変化に伴う売上の増加や減少 ・様々な温度帯で消費される飲料・食品など
末端製品へのバランスのとれた販売政策
(販売ポートフォリオの平準化)
・気温上昇に伴う疾病リスク増加を抑制する製品の共同開発(例:熱中症対策飲料)
リスク 平均気温上昇による、主に生産部門での
暑熱対策強化に伴う費用の増加
・暑熱対策の継続実施、水平展開
・人的被害リスク軽減の為の製造工程省人化の推進

移行リスク

期間 種別 リスク・機会項目 対応策や機会
長期 リスク 炭素税や排出権取引制度等の導入による、
費用の増加
・創エネ、省エネ、脱炭素エネルギーの採用
・サプライヤーと連携したCO2削減
・商品および価格体系の見直し
・CO2削減のための製造工程の抜本的な見直し
(プロセスイノベーションへの取り組み)
・CO2削減のための原料調達方法の抜本的な見直し
リスク/
機会
新たな技術開発のための研究開発費用の増大
エネルギーコスト削減による製造コストの
削減
・燃料転換導入コスト精査によるコスト削減
・非競争分野に於ける同業者及び異業種との
共同研究の推進
・製造工場に於けるボイラー燃料転換
(脱化石燃料化の推進)
リスク 再エネ燃料として原材料(サトウキビ)が
バイオエタノールに使用されることによる、
原材料調達コストの増加
・原料供給量の減少に伴う原料価格(国際相場)
上昇を見据えた商品および価格体系の見直し
機会 当社グループのサプライチェーン上の取引先企業との共同配送、モーダルシフト、受発注の最適化等による事業コストの増大抑制 ・共同配送、モーダルシフトの推進
・非競争分野に於ける同業者及び異業種との
共同配送等の検討
リスク 消費行動の変化への対応(環境配慮製品)への費用の発生 ・環境配慮製品への適切な切り替え
・新たな環境配慮型製品の開発による商品の
高付加価値化推進
リスク 脱炭素に消極的な企業姿勢に対する
企業イメージの低下及び企業価値減少
・脱炭素への取り組みに関連する情報の適宜開示・情報の発信チャネル拡大
・サステナビリティ経営の強化と投資家を
はじめとしたあらゆるステークホールダーとの
コミュニケーションの強化
③リスク管理
DM三井製糖ホールディングスでは、一般的なリスク全般に対してリスク管理規則を制定し、代表取締役社長をリスク管理最高責任者として、定期的なリスク評価や規程類の整備などのリスク管理を実施しております。リスク・対策の見直しは部門、グループ子会社にて年1回実施しております。気候関連のリスクと機会についてもかかる枠組みの中で他のリスクとともに統合管理を行っております。
気候関連のリスクと機会については、DM三井製糖サステナビリティ推進室が、社内の関係部署やグループ会社と協働しながらリスクと機会の特定を主導し、状況の把握を行い、DM三井製糖ホールディングスのサステナビリティ推進室へ報告します。
DM三井製糖ホールディングスのサステナビリティ推進室は、気候変動に関する活動を含め、グループとしてのサステナビリティ活動のデータを取りまとめ、DM三井製糖ホールディングスのサステナビリティ委員会に報告・提言します。サステナビリティ委員会は、前述のとおり経営会議への答申をとおして経営会議および取締役会に提案を行うことによって、当社グループ全体のサステナビリティを推進します。
このような体制により、当社グループでは気候関連リスクに対して適切なマネジメントを行ってまいります。
④目標と指標
当社グループでは、気候関連のリスクと機会を測定およびマネジメントするため、以下の目標を定めております。
物理的リスク:気象災害発生時にも早期復旧が可能な体制の構築・維持(設備の定期メンテナンス、自社工場および製糖委託工場を含む複数供給網の確保、定期的なBCP訓練やその見直し、原材料調達先との連携や複数購買など)
移行リスク:CO2排出量について、2030年度までに2015年比で46%削減し、さらに2050年度までにカーボンニュートラルを達成(スコープ1・2において)
また、CO2排出量の削減に関連する目標値として、以下を定めております。
  • 水資源排出量の削減
    2030年度までに水使用量を2015年度比で20%削減

    ※水使用量を生産活動に伴い使用した水資源(排水量ベース)と定義

  • 廃棄物排出量の削減
    2030年度までに廃棄物ゼロエミッションを達成

    ※ゼロエミッションを廃棄物リサイクル率98%以上と定義

当社グループでは、これらの目標達成により持続可能な社会を実現するべく、取り組みを進めてまいります。